Sちゃんへ
Sちゃん、元気にしていることと想います。電話もMailもほとんどしないけれど、自分にはSちゃんの事が良く見えるしSちゃんにも私が良く見えていますね。その辺の感じはコトバには出来ないけれど、まあ私達がみのり保育園のブランコで、毎日毎日絶妙なバランスで二人乗りをやっていたことから来る確信、だと思います。そこんとこ、どんなもんでしょう?
こちら、今年は雪がほとんど降らず。先日、やっともう後戻りしないくらいには降り積もったのですが、昨日の雨でほとんど消えてしまいました。雪が降れば町全体が明るくなるので、救われた気持ちになります。こちらに移り住んでもう10年以上になりますが、今だもってこの年の瀬の短い日照時間と鉛色の空には気持ちが幾分擦り減ります。子供達が好んで見に行きたがる、よそのお宅のクリスマスイルミネーション、あれ見るたびに何故か故郷を想います。彼らにとってのイルミネーションは、私にとっては夏の夜の蛍の群れ。電飾の灯りに感嘆の声をあげる彼らの中で、自分だけが北海道生まれでないことを実感します。その光がカラフルで美しければうつくしいほど、どこか寂しい気持ちになるのはどうしてでしょうね?
今年もそちらには帰りません。何度か母から打診がありましたが、帰らないことに決めました。「お父さんが喜ぶよ」という一言に、一瞬心が痛みましたが・・・。いつも帰りたいと想っているのに、帰ることができる状況にあればあるほど、帰らないことを選ぶのはどうしたものでしょう?いつでも、安心して戻る事のできる場所があるというのは本当にシアワセなことですね。小さい頃とほとんど変わらない家や、そこで使っているいつまでも割れる事のない安価な食器、代わり映えのしない本棚の本、そしてかつての自分の部屋・・・そういうものの中にあって、少し年を取った両親を見るのが嫌なのかもしれません。母にはよく会っているけれど、父とはいつも電話でのやり取りだけだから。
そんな訳で、今年のお正月もこちらで迎えます。31日からお客さんがみえるし、今年は新年2日から辻谷商店で「新年会」の予定。いつでも誰でもご参加ください!というもので、持ち寄った料理を大皿にどんどん乗せていく高知の皿鉢形式でいくつもりです。そこにSちゃんもいたらどんなにか楽しいだろうに、とこういう時はいつも思うのです。
店の向かいでは、日々、道の駅の工事が進んでいます。見慣れた風景がどんどん変わっていきます。あんなに毎日見ていた風景も、壊されて何日か経てばもうどんなだったか記憶が曖昧。人の 意識や記憶は、ほんとうに心細いものだと思います。そういえば、町なかにあった古いバスセンターもいつの間にか更地になっていました。そういうモノを目にするたびに、故郷に帰るのがためらわれるというものです。風景が変わるというのは、そこを離れた者にとっては取り返しのつかないモノを失ったような感覚があります。けれど、自分の記憶の中にある建物や出来事、人びと・・・そんなものを当たり前に共有できる思い出、というものを持った幼馴染みというのは、本当にかけがえのないものです。Sちゃん、ありがとう。
そちらはどんなですか?仁淀川河口では、シラスウナギ漁の青いテントが、この冬も破れた裾をヒラヒラさせているのでしょうか?実家や家族や幼馴染とおなじくらい、あの場所は大切な場所。何年かに1度そちらに帰るたび、私達にとっては、いつも子供の頃そうしたのと同じように、凧揚げをしたり近況を報告しあっったり思い出を引っ張り出してきたりする場所だよね。この次はいつになるでしょう?
薪ストーブにも出番がきました。先日、フランスで使われていた古くて大きなソファが届いたので、さっそく模様替えをしました。ストーブにちょっかいを出せる場所にソファ席を 沢山と、もう一つカウンター前にひとつ。ここでストーブの火を眺めながらお喋りできたらどんなにか素敵だろうにと思います。
近くの水郷公園に渡る橋。屋根裏部屋からみた風景。(M)
今日は皆既月食が見られる日でしたが、Sちゃんは見ましたか?私達は店をちょっと抜け出して、町外れの草原の丘の上に立って、月が地球の影に隠れていくのを眺めました。最近は本当にしょっちゅう月を眺めます。どこにいても月はひとつだから、遠く離れた大切な人と、もしかしたら同じ瞬間に月を見上げているかもしれないな、などと思いながら観ているんです。月を観ているというより、月を観ている人を見ているような気持ち、に近いよね。
今年中にやってしまわなければいけないこともお互いにいくらか抱えてはいると思うけれど、どうか最後の最後まで、きっちりと気持ちに添う毎日を過ごせていけたらな、と思います。大げさに1年を振り返ったり新しい年にはしゃいだりするこの時期が、すみやかにシアワセに過ぎ去り、早く日常に戻って欲しいと思っている、などと言えばあまりにも軽薄すぎるでしょうか?でも、何てことはない日常の中にある美しいものや優しい気持ちを探すほうが、よっぽど刺激的で好きなのです。
どうか、元気でいてください。また書くね。
私のことだから、多分年賀状は出さないような気がします。
あや
おまけ:先日、釧路から時々お店に来てくれる3人娘と、撮影会?をしました。辻谷商店には、この冬も沢山の衣料や雑貨、CD、アンティークなどが届いています。何故か広報活動というものが苦手なのですが、こうやってみんなでワイワイ言いながら服を選んで写真に収める、というのは本当に楽しかったです。店の様子を見たいと言ってくれていたので、少しでも雰囲気が伝わればいいな。
モデル:KONちゃん 服・写真 AYA
ヨーロッパUSED帽子、フィッシャーマンズセーター、USEDニッカポッカ、アザラシのブーツ、インド自転車
モデル:KOBAYUKAちゃん 服:3人娘 写真:AYA
PENDLTONジャケット、70’Sプリントシャツ、USオーバーオール、USED UGGブーツ、モロッコカゴ
モデル:TACHIBANAさん 服:AYA 写真;KOBAYUKAちゃん
スイスUSEDスカーフ、ネパール草木染手編みベスト、ハンドプリントワンピース(オールドマンズテーラー)、USEDファーシューズ
モデル:KONちゃん 服:AYA 写真:KOBAYUKAちゃん
USEDベレー帽、PENDLTONジャケット、アンティークナイトドレス、USEDアディダススニーカー、インド革バッグ
モデル:TACHIBANAさん 服:本人 写真:KOBAYUKAちゃん
UDEDニットストール、アンティークリネンナイトワンピース、USEDロマンティックスカート、USED革ブーツ
モデル:KATZ 服・写真:AYA
リネンストール(チャハット)、ノルディックUSEDカーディガン、フレンチボーダーシャツ、ドイツUSEDアーミーパンツ、USEDマウンテンブーツ
モデル:KATZ 服:本人 写真;KOBAYUKAちゃん
USEDアディダスジャージ、ラスタキャップ
モデル:KONちゃん、KATZ 服:AYA 写真:KOBAYUKAちゃん
KONちゃん)USEDチベタンベスト、USEDハンドウォーマー、アザラシブーツ
KATZ)USEDベレー帽、スイススカーフ、PENDLTONジャケット、ドイツアーミーパンツ、マウンテンブーツ
撮影の後はKATZ特製のミートソーススパゲッティとエスプレッソでしばし談笑。KOBAYUKAちゃんは、釧路市末広町で、「ルイーダの酒場」というバーの女店主。TACHIBANAさんは、その2階で「橘珈琲店」をやっています。そしてKONちゃんは仲良し3人組です。次回は、お天気のいい日に野外でできたらいいな、できれば男の子も交えて、と思っています。どうもありがとうね♪
辻谷商店、残すところあと4日。素敵な今日を!