親愛なるSちゃんへ
Sちゃん、すいぶんとごぶさたしてしまいましたが、お元気ですか?私は元気元気です!昨日雪虫が飛ぶのを見ました。なので、こちらは冬が大股でどしどし近づいて来ている様子。そちらはどうですか?もう金木犀の花は散りましたか?子どもの頃、金木犀の匂いを追いかけて、Sちゃんと細い路地を自転車でいつまでもいつまでも走ったことを想い出します。
おじちゃんやおじいちゃん、おばあちゃんもお元気ですか?おじいちゃんやおばあちゃんは、私達が子どもだった頃もちゃんとおじいちゃんとおばあちゃんだったのに、今もまだおじいちゃんとおばあちゃんだなんて、何だか凄いですね。そういえば、Sちゃんのおじいちゃんの左足の膝には、戦争の時に受けた銃弾が入っていると言って触らせてもらったことがあるけれど、アレはまだ、入ったままなのでしょうか?
2年前、Sちゃんちにお邪魔したときはもう「○○酒店」の看板はなくなっていて、行く前はきっと寂しさでいっぱいになるのだろうと覚悟して行ったけど、そんなでもありませんでした。私にとっては全てが昔のまま、ただ、大きな冷蔵庫にはビールがもう入っていなくて、そしておじちゃんとおばちゃんの姿がないのが不思議でした。あの頃は、いつでもバヤリースとかキリンレモンがあって、それを買うともらえたりする景品が何でも手に入るSちゃんが羨ましかったし、おばちゃんがこしらえてくれるお昼のチャーハンがなんとも言えず美味しかったことを覚えています。なんてことはないチャーハンなのに、どうしてウチのお母さんのよりこんなに美味しいんだろうってずっと不思議でしたが、そのヒミツは味の素だったんだと大きくなってから気がつきました。うちにはなかったから、味の素。
仕事の方はどうですか?相変わらず、言語の違う日本人の皆さんに苦戦していることでしょうか?間違っていると思ったら、言わずにおれないSちゃんのことだから、大変な場面もいっぱいあると思うけれど、やっぱりこれは土佐の女のサガということで、まっすぐ顔を上げて闊歩するのみ!なのです。そうなのです!
私の方は相変わらず店という所でゴソゴソやっていますが、年々楽しくなる一方です。でも、北海道の右の真ん中らへんのこのアタリに住むようになって、自分の立ち位置、みたいなものがシックリくるようになるまでには、何年もかかったように思います。そして、今だもってなぜ今ここに居るのかということが鮮明ではありません。どんな年月をもってしても、Sちゃんも暮らす高知という場所以上に私を自由にしてくれる所はないのではないかと、10年以上経った今でも思います。
ごぶさたしている間、私は毎夜毎夜、焚き火のとりこになっていました。また、知り合いの方がうちの近所に設営している軍用テントの佇まいと、快適さにノックアウトされ仕事もそぞろに夕方からはそちらへ足が向いていたという訳です。ここには屋根と壁とダルマストーブとベッドがあって、それ以上でもそれ以下でもなく、「そこそこ」な感じがとても気に入りました。新しい家を建てるくらいなら、この軍用テントが欲しいと本気で思っています。Sちゃんもきっと気に入ると思います。
この頃は、何だか嬉しいことや愛しいことが日々沢山あって、それと同時に切ない気持ちもあって、そんな時には焚き火やロウソクの灯りが丁度よいのです。あまり喋り過ぎないのもいいものですね。
これが私を虜にしているフランス軍用テントです。中はとっても広くて温かく、完璧です。
ロウソクの灯りはいいものですね。なぜかは上手く言えないけど。
そういえば、今日は珍しくお店でガッカリする様な事があったんです!先日、KATZが東京に行ったときに、青山のお友達のお店で見せてもらって選んできた首飾りが、無くなってしまったのです。それは、紀元前2,3千年前の発掘ガラスの小さな欠片と、青い美しい石を連ねたネックレスを組み合わせて出来た素晴らしいもので、眺めているだけでもうっとりするような想像の余地のたっぷりある首飾り。何度も撫でたり首にあてたり楽しんだあと、アンティークのショーケースの中に大切に飾ったのです。
夕方、そのショーケースをご覧になりたいという方がいて開けようと思ってみたら、首飾りはもうどこにもありませんでした。その時は、あまりのショックにギューっと両目をつぶることしかできなかったくらいです。Sちゃんには、私のこの時の様子が、手に取るように見えるでしょう?
首飾りが無くなったということよりも、首飾りを持って行ってしまった人が、いくらかの時間を同じこの場所に居たということが想像できず、しばらく呆然としていました。呆然としていたら、突然お客さんが近寄ってきて「今日は、大安です」って言うんです。それで、「大安なんですか?」って応えたら「大安です」って。それで、その人はおもむろにポケットからブレスレットを取り出して私に見せたんだよね。「???」「大安です」って。「頂けるんですか?」と尋ねたら、「ハイ、スミマセン」と言って、私の手首に巻いてくれました。
それは5種類の石や木から出来ていて、その人はその中の透明の石を指差して「水晶です」って言いました。「水晶ですか」「水晶です」みたいなやり取りが5往復くらい続いて「おそろいです」って、その人の手首に巻かれたブレスレットを見せてくれました。「おそろいなんですね?」「スミマセン」・・・・・
その人は「スミマセン、スミマセン」を何回も言って、周りのお客さんもそのスミマセンに反応するくらいまで連呼してから、帰っていきました。
その時は、訳が分からず泣きそうになったけど、Sちゃんにこれを書いている今は元気です。そして、左手首のブレスレットの水晶が、綺麗です。なんで、こうなったかは分からないけど、紀元前2,3千年の時を越えて、発掘ガラスが水晶のブレスに早がわりし、今、ここにあります。心は晴ればれです!
これが、このところの私の近況です。Sちゃんの近況もまた、聞かせてください。では、今度高知に帰った時には、また仁淀の河口で凧揚げしましょうね。いつになるかな?
それではまた、愛をいっぱい込めて・・・・・ あや
こんばんは。twitterのお二人のつぶやきを拝見して、切ない気持ちになっていました。なんとも声をかけられないときは黙っていなさいと旦那が言いました。
今日は、先日辻谷商店からいただいてきたカーディガンを着たくなり、袖を通しました。1日あたたかで守られているような気持ちでした。物を買ってこんなにひしひしと「思い」が伝わってくるような経験はこれまであっただろうか…と、不思議な気持ちになりました。
グッとくるもの、これからも楽しみにしています。
投稿情報: そみ | 2010/10/17 20:11
そみさん
そみさんご夫妻には、本当にずっとずっと昔から変わらず私達を
見守って頂いていることに極最近気付いた私です。気が付けば
何年もお店に来て頂いていて、お店や子供達のことも含めて
いつもバタバタと落ち着きのないこんな調子の私達を、温かく
変わらず見守って下さって本当に嬉しいです。
首飾りは消えましたが、こんな優しいコメントが届くんです!
それ以上のことはありません。ほんと、それ以上のことは
ないのです。ありがとう!嬉しいから、元気になりました。
ご主人、猫ちゃまにもどうぞ宜しくお伝え下さいね。あや
投稿情報: あや | 2010/10/17 23:47