3日間を予定していた辻谷商店及び、つじや食堂臨時休業for店内ディスプレイ期間は、予想通りあっさりと明日への延長戦へ持ち越され、今夜もビールとコーヒーの至福の夜を迎えております。みなさんご機嫌いかがですか?
3日間の休業にあたり、休業の旨とお詫び、そして最後に「ご迷惑をおかけいたしますが宜しくお願い致します」と結んで商店入り口付近に張り出したものの、この休業を「ご迷惑」だと思ってもらえるほどの何かが本当にうちの店にはあるのだろうか?というヒネた考えが浮かんだ。そんな事を考えながら店の中を行ったり来たりしていた矢先に1本の電話。大抵はピーっという癇に障るFax受信音に「やっぱりね」となる所だが、遠く陸別から「明日お店に行きたいのだけれど開いていますか?」という問い合わせの電話だった。本当ならば明日は開けている予定なのだけれど、現在の進行状況からして明日もお休みを頂くかも知れません、とお話しし、夕方改めてお電話致しますと一旦受話器を置いた。夕方折り返しお電話し、明日もお休みを頂くことをお伝えしたのだが、電話の向こうの若い女性の声が、一度目のお電話の時と同様弾むように明るく友達に似た匂いを感じ「もし今度いらした際には、是非声をかけて下さい!」とお願いした。明日はやっていないですよ、とお伝えしたのはこちらの方なのに、逆に何か「店をやる」ということへの確信みたいなものを頂いたような、嬉しく爽やかな気持ちになるお電話だった。
あらゆるものが一旦取り払われ、色んなものがとりあえずに置かれ、店の中がゼロからではなく、マイナスからのスタートといった状態になった 店内
今回は主に、店に入って右手の衣料やブランケット、CD、LP、DVD方面をひっくり返している。昼前に出勤すると、KatzがCDやLPレコードなどを全面的に並び替えていた。Katzが地元の建具屋のおじさんにお願いしてあつらえてもらったガラスの陳列棚に、CDなどが新たな定位置を与えられて並べ直される。とはいっても、所詮14×12のほぼ同じ形状のCDが右から左へ、上から下へと移動したとしてもたいての人は気がつかないのだけれど、本人にとっては、誰かが気づくとか気づかない とかいったことは大した事ではない。それは、選ぶモノにもよく現れていて、売れるとか売れないとかいった事とははるか遠いところにある。ディスプレイが終わってやや遠巻きから陳列棚をながめ、嬉しそうだ。
私は主に衣料やブーツなどを並べる。多くは古着なので、時々取れかかったボタンを縫い直したりすることで時間がドンドン流れていく。普段はN美嬢がこまめにそのへんのことをカバーしてくれるのでとても助かっているのだが、今日は自分でデニムJKのボタン付けなどをした。古いビンの中の沢山のアンティークボタンの中から、取れた箇所に合いそうなボタンを探すのは面白い。いっそ、全く違った色をつけようかとか思ったりもする。古着の中には誰かが何度も繕った形跡の見られるものも沢山あり、何十年前か、ヨーロッパの何処かの誰かが、この服を膝にのせ繕った時間を想うのは楽しい。子供服などには、その子の親が縫い付けたであろうイニシャルが首後ろあたりに残っているものも多く、JとかWとか、日本の子どもの名前にはあまり見られないイニシャルに気分が上がる。
極端なことを言えば、何度か繕われたり当て布をされたり、一箇所だけ違うボタンが付いていたりするものに魅力を感じる。その当て布自体がかなり古いプリントだったりすると、それが表立って見えない所であっても得をした気分になる。時間経過だけははどんなに努力しても一足飛びには手に入らないものだから、こうして時を経て柔らかくクッタリなった服に、値段とは違う意味での価値を感じる。新しい服、新しい靴、かけたばかりのパーマ、小学校新学期の新しく真っ白な上履き、ビニールカバーのかかった新車・・・・・そんなものにどこか身の置き場に困るような居心地の悪さを感じる人には、この気持ちが伝わるかなあとか思ったりしながらの作業が続く・・・
今ある雑貨の中でも特に好きなアフリカの灰皿。殺虫剤か何かの缶から作られているが、リサイクルなどという コトバが陳腐にさえ思える、ロックな佇まいにグっとくる
何年か前にKatzがどっかから仕入れて来た標識。できる事なら、築40年の我が家外壁に飾りたいと思っている。コレを描いた人とは、友達になれるという根拠のない確信がもてる一枚。
アフリカンイケメンヘアスタイル事情を垣間見る、床屋の看板。中央男が、Genta Tanakaに見えるのは私だけだろうか?(って、友達の事なんで分からない人のほうが多い)
「なくても困らないもの、何の役にも立たないもの、時代とともに価値の薄れる予感のするもの」に魅力を感じる今日この頃。世の中は、使い勝手が良く高品質で、普遍的・定番と呼べるものに本物という名前をつけがちな 風潮にあるように感じるが、いつも自分達の中の「グっとくる」という部分を信じてやっていきたいなあ、と再確認しながらの臨時休業3日目だった。明日も作業は続く・・・
最後に、10代の頃に通っていた高知の雑貨店「アハナベック(現在はアハナとムジカ)」、大好きなNORIKOさんの作ったランプシェード。おおらかで豪快な笑顔がいつも浮かびます。 あや