随分とごぶさたしていました。お元気ですか?この10日足らずの間に、弟子屈は夏から秋へと移り変わり、私達には楽しいことや悲しいこと、嬉しいことや美味しいこと、新しい出会いやさよならなどなどが、ギュッと詰め込まれた時間でした。数日前には裸ん坊で泳いでいた子ども達の、真っ黒に日焼けして皮のむけた身体も急に季節外れのものとなり、秋になると決めたらあっという間に私達を置いて行ってしまうところに、今年もやっぱり道東に暮らしていることを実感するのでした。あんなに嬉しそうに舞っていたモンシロチョウ達もいっきに姿を消し、散歩途中の道の上に亡骸となって2枚の羽を重ねて落ちている様は、もうただの白い薄い紙切れのようでもあります。それでも、朽ちていくものあれば実ってくるものがあり、子ども達は熟した小さな木の実を次々と口に放り込んでは「母ちゃんも食べるか?」と尋ねるのです。大人だけが、なんとなく季節の移ろいに微調整を必要としているようで、辻谷商店も大きな町のお店のようにすっかり秋もの入荷!とはいかず、「本当に秋になってきたねえ」などといいながら、じわじわと暖かいものや、灯りのともるものを並べたり、コーヒーをすすっては友だちと話したり・・・そんな毎日を過ごしています。
今、午前3時をまわったところ。外ではビョービョーと薄気味悪い風が吹き、いよいよ寒くなってきたので食卓テーブルからPCを持って移動。ちゃぶ台を出し、何ヶ月かぶりにストーブのスイッチを押す。、まだ薪ストーブに火を入れる程ではないけれど、薄ら寒さに負けてスイッチについ手が伸びてしまいました。
9月最初の3日間、辻谷家恒例の「和琴キャンプ」。今年は釧路のスープカレー屋「ガルガンチュワ」家族とミックス!大人よりも圧倒的に子どもの数が多く、連日、裸率100%なのでした。
こちらも恒例、荷車で子ども達を運ぶ。運んでいるのはガルガンチュワの番ちゃんです。お互い定休日が同じなので、番ちゃんのカレーはまだ食べたことがないけれど、キャンプ中にもありとあらゆる料理をせっせとこしらえてくれた彼。本当に料理が好きなんだなあと、その料理と味に、随分Happpyにしてもらいました。
木陰で読書な彼女
ランタンの灯りで人生を語る両家の長女二人。「うちの親ってばさあ・・・」
焚き火と酒とお月様の夜は更け・・・隣りにテントをはった旅人も一緒に火を囲む。彼は元気だろうか?
私達の人生に、空の下、土の上で眠ることは必要だと再確認した3日間でした。
キャンプ中、突然現れ私達を釧路川に連れ出してくれた「ガイドステーションわっか」のガッテンさん、さなえちゃん、そして直美ちゃん、本当に本当にありがとう!!!友達っていいなあ、と、今年は何度も何度も思ったよ。
悲しい事もありました。
先日、私達の犬が死にました。
8月25日に私と犬は、本当に久しぶりに庭で一緒にお昼ご飯を食べ、犬語で話をしました。その彼が突然死んだのです。今年の長く続いた暑さと、いつの間にか尻尾に負っていた傷が彼の老体を驚くほどの速さで蝕んでいました。
目に見えて、手の届かない世界に行こうとしている彼を前にして、Katzは一生懸命お湯をかけきれいにしてあげようと必死でした。悲しさで歪んだ長女の顔は、私が彼女を生んでからこれまでで、初めて見る表情でした。息を引き取るまでのわずかな時間に、犬の瞳にはうっすらと幕がかかったようになり、みるみるグレイ色に変化していきました。その様を目の当たりにしながら、私はカメラを向けていました。こんな時に、涙を流すでもなく、まったく自分の為だけにシャッターを押している自分がとても嫌でした。それでも、もうほとんど自由の利かない体で仰向けになって見上げている彼の視線の先にある青空にもシャッターを切っていました。悲しさと自己嫌悪の入り混じった時間が流れていき、最期に2度、ビクン、ビクン、と筋肉を引きつらせたのを確認した後、完全に息絶えました。「かんたんに居なくなってしまうんだな」そう思いました。Katzが穴を掘り、そこに犬を横たえた時、長女の顔は青ざめ、私は自分の感情はどうなっているのだろうとまだそんな事を考えていました。「ここから先は取ってやるからな」と言い、Katzが青い首輪を切ってやりました。長女はその首輪を捨てることを拒み、また泣きました。15年間の彼との暮らしに、突然終わりが来ました。
この出来事が、私達にとっての夏の終わりの印となりました。
最期に彼(犬)の横顔に私も並ぶように頬を寄せ、その視線の先にある青空を一緒に眺め、シャッターを切りました。なんの為にそんなことをしたのか、自分でもわからないのでした。
その日の夜は、辻谷商店は3年ぶりとなる[Pikaia Pandeiro Special Live]でした。
Timがライブの為に得意のタコスを仕込む、後すべて完売!旨し!!
この日は個人的に色んな感情を持ってのライブ幕開けとなりましたが、Petの渡辺さん、Pandeiroの小澤さん、そして初めて今回お会いすることが出来たGuiterの助川さん、Saxの小森さんの音が鳴り始めたと同時に涙が止まりませんでした。胸がいっぱいになる、とはよく言いますが、溢れ出るもので身体がいっぱいになって、もうあとは身体の外に出すしかないような、涙になるしかないな、という感じでした。ここに自分が居ること、目の前に居てくれること、そのことだけで十分な程の気持ちでした。簡単に言えば、やっぱり「嬉しかった!」です。
長女が生まれた時に作ってくれた「Dance Dance Mugi!」が始まる♪もうじき8歳を迎える彼女に、月日の流れを感じる。恥ずかしさと喜びでいっぱいの彼女はこの日まで「ねえ、いつ来るの?いつやるの?」と。
その後、「風と寅(ポルトガル語の名前がついている)」も続けて演奏してくれる。
渡辺さんや小澤さんのお気持ちに、身に余る幸せを受け取った瞬間でした。
ライブの夜のことは、いつでも上手く言い表せません。ただ、こんな小さな町の小さな店にまでやってきてくれるミュージシャンの方達に、多大なる憧れと感謝をもっていつも手を振り見送ります。
私達がただいたずらに日々を重ねている間にも、いつも楽器を手に音楽を突き詰めて生きていっている姿に、自分は本当にこれ以上ないというくらいの気持ちで、日々をやれているのだろうか、と振り返ります。
P.P.S.の音楽に、私は平和を想いました。作曲した渡辺さんがそれを意図していなくても、沢山の人の顔が浮かびました。9月5日は、忘れられない1日となりました。
そんな訳で私達の夏は本当に終わり、今日は空の高い弟子屈です。もう、本当に夏に戻ることはないでしょう。
今年の夏は長かった。季節は変わっても友達や家族は変わらず側にいます。
辻谷商店、秋もいろいろ構想中。皆さんにも良い季節でありますように!長ツ!!あや